ハードウェア関連の仕事をしている方であれば、香港で開催される「香港エレショー」というイベントを少なくとも耳にしたことはあるのではないでしょうか?
この香港エレショーというのは、香港で開催されているエレクトロニクスの展示会こと。
正式には香港のGlobal Sources社が開催する「Global Sources Electronics」とHKTDC(香港貿易発展局)が開催する「Hong Kong Electronics Fair」の2つの展示会を指します。この展示会が年に2回、同時期に開催されており、日本人の間ではこの2つの展示会のことを総称して香港エレショーと呼んでいるようです。

これらの展示会には、広東省を中心に中国から広くあまねくエレクトロニクス系の企業が出展をしています。ただの組み立て屋からバッテリー専門のメーカー、プリント基板専門のメーカー、樹脂の成形屋、貿易関係でいえばクーリエまで…ほんと様々。さすが世界の工場、中国です。
こういうところで仕入れのビジネスチャンスを掴んだり(とはいえこちらは少数ですが)、ODM/OEMといった形態で製品を生産する工場を見つけるために世界中からビジネスマンがやってきています。
この記事を読んでいるあなたもおそらく、上記に当てはまり

今度ビジネスで香港ショーへいくつもりだが、規模がデカイしぶっちゃけどういう回り方をすればいいのかわからない
といった感じなのではないでしょうか。
そういった香港ショー初心者の方向けにこの記事では、
をご紹介していきます。ぜひお役立てください。
どんなものが展示されているのか?
まず、どんなものが展示されているのかについて。これはホントに多様です。色んな電気製品、また電子部品が展示されています。
香港エレショーのことをざっくりと知りたいなら、インプレスが運営している「家電Watch」に掲載されている記事が詳しいでしょう。

またこちらのCnet Japanの記事もかなりイベントの雰囲気を理解する上では有益な情報です。

もし見てみたい特定のジャンルの製品があるのであれば「Global Sources」であればジャンル別にブースが異なっているので事前に場所を調べていくことをおすすめします。

また「Global Sources」は電気製品の完成品がメインの展示会ですが、「Electronics Fair」は電子部品を取り扱うメーカー・代理店もそこそこ出展しているので、電子部品に興味があるのであれば後者のほうを重点的に見ておくほうがよいでしょう。
香港ショーは家電のトレンドを知るという側面も
香港ショーに行くと分かるのですが、どれも似たり寄ったりの製品が多くならんでいます。数日会場を回ると最後のほうは、同じ製品で既視感だらけの世界になるでしょう。
特に流行りの製品は非常に多くの会社が出展しています。例えば、非接触充電技術の「Qi」をAppleがiPhoneXから採用し始めたせいか、先日の香港ショーでは色んな素材でQiの充電器を造っているメーカーを非常に多く見かけました。


そういう側面では、世界の家電のトレンドを知るという意味で香港ショーは面白いでしょう。
しかしなぜ似たような形、似たような製品が1つの会場に沢山展示されているのでしょうか。それは中国の製造業特有のエコシステムが起因しています。
もしその中国の製造業の背景を知りたいということであれば、中国の深センにて日本企業向けに精密機器の組み立て事業をされているジェネシスホールディングスの藤岡社長の『「ハードウェアのシリコンバレー深セン」に学ぶ』という本を読まれることをおすすめします。製造業に関わる方なら必読です。良書です。
どんな人が来ているのか?
香港ショーには中国国内からはもちろんのこと、世界中から様々な人がやってきています。その多様性には驚くでしょう。たまーに日本語が聞こえたり日本人の姿を見かけますが、全体で見たら少数かなと。(日本人はワイシャツにスーツなので、非常によくわかります笑)

そんな我々日本人ですが、企業のブースへ行って「日本から来たんだ」というと、「えーお前は、サンワサプライの人?もしかしてダイソー?」などと声を掛けられます。勝手に固有名詞出していいのか?と思ってしまいますが、なるほどこういう会社の人が中国を使ってモノを作ってビジネスしてるんやなあと感心します。
勝手に固有名詞を出すという意味では、出展企業がODM・OEM元の企業名を勝手に言ってしまうことがありますね。

(Bluetoothイヤホンを触りながら)樹脂パーツの嵌合が悪いし、チープな製品作ってんなあ…

ああ、それ○○(日本の某超有名家電メーカー)のODMで作っている製品やで
これを聞いた時にはかなりショックを受けましたが、よくよく考えれば有名家電メーカーは世界に幅広く自社のブランドを通じて製品を供給しています。つまりこういったチープなODM製品でも、新興国市場向けに販売することを目的に安価にODMで製造していることを考えると企業戦略だよなあと思うわけであります。
ただ本来であれば企業にとって中国のODM・OEM先が世間にバレてしまうのはよろしくないはずなので、もし既に中国企業とやりとりされているのであれば、そこはキツめに言っておきましょう。
香港ショーを回る上で知っておきたい4つのこと
香港ショーを回る上で私が思った、ぜひ知っておきたい4つのことをここではご紹介します。
①名刺とブローシャはホチキス留めしてもらっておく
このイベントに来ると、とにかく色んな企業を訪問することになります。ひたすら候補になる企業を探すべく様々なブースをローラー営業の如く回ることになるでしょう。
いろんなブースを回ると最終日にはもらった名刺の数も膨大になり何がなんだか分からなくなるはずです。「あれ、この名刺の人だれやったっけ…?」と。
そこで重要なのが名刺をもらっておく時に、ブローシャ(パンフレット)と一緒にホチキス留めしてもらっておくことです。大抵の企業はそうしてくれますが、たまに別々で渡される時があるのでホチキス留めてくれと言いましょう。

そうそうパンフレットじゃ通じないので「Brochure(ブローシャ)」という単語を使いましょう。カタログでも通じる場合があります。
もちろん出展企業側も色んな人を相手にするので、基本的にはこちらのことなんて覚えていません。なので一緒に写真撮影を求められることがあります。

これは記念写真でも何でもなく、こちらのことを忘れないようにしておくため。会期後にこの一緒に撮った写真が添付されて、「YO!こんな顔していた私だよ!覚えているか!?」なんて営業メールが来たりします笑
②ブローシャーだらけになるので、要対策をしておく
1日会場を回るととにかくブローシャだらけになります。非常に重いし持てないです。持ち帰るのすら大変です。なので
- イベント会場で配られている大きな袋をもらっておく。これをブローシャ入れにする
- やや大きめのスーツケースで香港に来るorブローシャ分のスペースは確保しておく
- スーツケースは帰国時に相当重くなるので、LCCは極力さけておくほうがベター
といった対策をしておくことが大事です。

「イベント会場で配られる大きな袋」ですが、レジストレーションのエリアかもしくは会場へ向かう道中で配られていたりするので要チェック!
③こちらが渡す名刺は電話番号の記載がないほうがよい
相手の名刺をもらう時にこちらの名刺を渡す必要があるのですが、できれば電話番号の記載がないほうがいいかなと思います。
中国企業は非常に営業熱心です。帰国後、私のメールボックスは凄いことになっていました。
メールだけでなく国際電話で国を超えて、英語で私に電話を掛けてくる企業もいて、とても凄まじいものを感じます。電話番号の記載は避けておいたほうがベターでしょうね。
④相手に応じて名乗る業種を変えておくことのススメ
香港エレショ−ではODMやOEM先を探される方が多いでしょう。日本で開発を行い、製造は中国で行っていきたいという方が多いはずです(いわゆるファブレス)
たしかに香港エレショーでは英語が通じるのですが、「俺たちは製造業だからmanufacturerだよな」といって、manufacturerという単語を使って会社を説明すると誤解を招くおそれがあります。工場を持っていると誤解されるからです。
だからといって、fablessという単語も通じないことが多いので、OEM・ODMの候補となる企業には「俺たちはDesign Houseのような集団だ」と伝えることをおすすめします。
デザインハウスとは、簡単にいえば基板やソフトなどを設計する中国独自の専門集団のことを指します。そのためデザインハウスと伝えておくと相手に「あー、だからお前らはOEM先を探しているんだな」と理解がされやすくなります。
一方で、部品メーカーの出展者にはデザインハウスと名乗ってはいけません。この場合はmanufacturerと言っておくほうがベターです。
なぜならデザインハウスと名乗ってしまうと、部品メーカーにとっては「ああ、この企業は量産しないから、冷やかしで来たのかな?」と思われるかもしれないからです。この場合はmanufacturerと伝えておくと相手の理解が進むでしょう。
香港ショーで要チェックすべき有益な情報
香港ショー開催期間中は世界中からドッと人が押し寄せるだけあって、ホテル代も高騰します。ただでさえ香港のホテルはべらぼうに高いのに、さらに高くなるなんて……(号泣
そこでなるべく安く費用を抑えたい方向けに耳寄りな情報をお伝えします。
新規参加企業であれば、HKTDC(香港貿易発展局)から助成を受けられる可能性がある
香港エレクトロニクスフェアに関してですが、香港貿易発展局から助成金を受けられる可能性があります。例えばこれは2018年春の情報ですが、ある条件を満たせば1800HKD(約25,000円)を助成を受けられたそうです。

香港貿易発展局に電話して聞いたところ、開催の2ヶ月ぐらい前から助成の受付を開始しており、1ヶ月くらい前に締め切ってしまうそうです。要チェックです。
HKTDCの提携しているホテルに泊まる
HKTDCは新規参加企業の助成に加えて、ホテルと提携していくらか割安な価格で予約を取ることができます。私の参加した2019年春のエレショーは終わってしまったので、その情報は既に見れなくなっていましたが、おそらく毎期ごとに公開しているでしょう。こちらも要チェックです。
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無料のシャトルバスを使って移動する(Global Sources)
Global Sourcesは香港国際空港の隣にある「Asia World Expo」で開催されています。空港に到着した初日は近くていいのですが、2日目からはわざわざ香港中心部からランタオ島まで移動しなければいけないので大変。

そこでGlobal Sourcesは尖沙咀や湾仔から会場まで無料のシャトルバスを走らせています。会期中はこれに乗って移動するのをおすすめします。エアポートエクスプレスで移動だと片道100HKDくらいかかるし、バスでも50HKDぐらいしますからね。
エアポートエクスプレスの乗車が無料になるという情報も聞いたことがあったのですが、もしかすると無料で乗れるのかもしれません。
まとめ:カブレはこう思った
香港エレショー、一言でいうとアリババ・ドット・コムのリアル版という印象が非常に強いです。アリババには広くあまねく中国各地の企業の製品が並んでいますが、香港エレショーはまさにあんな感じ。
それは中国製造業の縮図といってもいいでしょう。もし中国を活用したファブレス製造に興味感心があるのであれば、一度は参加してみることを強くおすすめします。その時はこの記事の情報をご活用ください。
その時に先ほどご紹介したジェネシスホールディングスの藤岡社長の本を読んでおくことで、中国企業・また製造業に対する理解も深まることでしょう。激しくおすすめします。
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